47都道府県、“ほしい”グルメを探す旅へ。地産地消にこだわる商品開発の裏話
「ANA FINDS」は、ANAの商社機能を担う全日空商事グループが手がける商品ブランド。日本全国・世界各地から選りすぐったアイテムやオリジナル商品を展開しています。
今回は、グルメにフォーカス。「ANA FINDS」ならではのグルメとは? そして商品開発にかける思いとは? グルメの商品開発チームを率いる、ANAフーズ 企画食品本部リテール営業部グループ企画チームの金子由美子さんにお話を聞きます。
百聞は1食にしかず!? まずは沖縄と北海道の●●を試食
この日、取材班が伺ったのは都内にあるキッチンスタジオ。
金子さんをはじめグルメ商品開発チームの皆さんが集まって、「ANA FINDS」の商品撮影を行っていました。
早速、取材の前に商品をいくつか試食させていただきました!
グルメその1 沖縄の島野菜にこだわったピクルス(ゴーヤ&トマト)
――まずは、この「うるまピクルス」から。どんな商品ですか?
沖縄の島野菜にこだわったピクルスです。南国の太陽のもとで育っただけに、食材そのものにパワーがあって、私はこれを食べると気分がすごく上がるんですよ。ほら、食べてみて!
——では、いただきまーす! ……ゴロッと大きめカットのゴーヤは、爽やかな苦味がおいしい! トマトの方は、ジュワッとジューシーでまるで果物みたいな甘さですね。南国の太陽が目に浮かぶ、明るい味わいです。
ふふ、そうでしょう? このピクルスを製造しているのは、うるま市で沖縄の伝統菓子を製造販売する「龍華」さん。社長さんが沖縄に強い思いを持つ女性の方で、「島野菜のおいしさを全国に発信したい!」と、地元農家と一緒にさまざまな取り組みをされているんです。農家の方が大切に育てた野菜だからと、規格外の野菜も正規品と同等の価格で仕入れて活用しています。
見た目も宝石みたいにきれいなのでお土産や贈り物にしても喜ばれますし、お酒に浸してカクテル風に楽しむのもおすすめ。ゴーヤは刻んでタルタルソースにしてもおいしいです。
グルメその2 北海道の佃煮屋独自の製法で作る帆立貝柱
――続いて、こちらの「生たき帆立貝柱」。佃煮でしょうか?
製造者さんの作る佃煮と同じ製法でつくられているのですが、ただの佃煮ではありません。佃煮といえば味が濃く、商品の見た目からも干した貝柱をイメージされるかと思いますが、この商品は帆立の旨みにタレがしみこんだおいしさと、半生のようなソフトな食感が絶妙なんです!
それというのも、一般的に佃煮とは一次加工した原料を乾燥させてから煮込みますが、こちらは水揚げされた新鮮な原料を生の状態から炊き上げる「生たき製法」で作られているから。
——んん〜っ!! 確かに、これは意外な食感! ふわっホロッとほどけるような柔らかさがクセになる。……すみません、もう1個食べてもいいですか?
どうぞどうぞ! ちなみに製造者の「山下水産」さんは、北海道寿都町にある老舗の佃煮屋さんで、「生たき製法」は地元の伝統製法です。
私も工場にお邪魔してこの目で見ましたが、湯気がもうもうとあがる小さい釜が何十個と並び、職人さんたちが釜の間をキビキビと行き来しながら炊きあげる様は圧巻でした。大釜で一度に炊けないので手間はかかるし、熟練の技も必要だけれど、おいしさのためにこの製法を守っているそうです。
——寿都町は「すっつちょう」と読むんですね。私は初めて聞く地名ですが、こんなにおいしいものがあるとは…… 辛口の日本酒がほしくなります。そろそろ今回の本題に入りましょう!
「47都道府県の知られざる美味を紹介したい」地域性にこだわるグルメ商品開発の背景
――先ほどはご馳走様でした! まずは「ANA FINDS」で扱うグルメの特長を教えてください。
全国各地から、その土地ならではの食材や伝統製法で作られた「食」を、厳選してお届けしています。
私はANAグループの食品会社であるANAフーズに所属し、これまでに国内の商品開発担当として全国を回ってきました。まだまだ全国には、人に知られていないおいしいものがたくさんあるので、これから「ANA FINDS」で皆さんにご紹介していけることを楽しみにしています!
――グルメのコンセプト「旅するごちそう。ANA FINDSで、旅するような食体験を」には、どんな思いが込められているのでしょう?
例えば、
「『うるまピクルス』がおいしかったから沖縄へ行ってみよう」
「沖縄に行ったら現地のフルーツや野菜をいろいろ食べてみよう」
と、「ANA FINDS」のグルメをきっかけに本場の味を楽しむ旅に出かけたり、自宅の食卓に並べて産地の風景や作り手の物語に思いを馳せてみたり。まるで旅するように食を楽しむことで日々を彩り、豊かな人生につなげてもらえたら——そんな思いを込めています。
――金子さんご自身もおいしい食を求めて全国を旅していますが、そこにはどんな楽しみがありますか?
現地でしか味わえない、本場の味と出会うことです。その土地の気候と風土に根差した食材や、伝統製法で作られた食事を現地で食べるおいしさはもう、格別ですから! 仕事でお付き合いのある農家さんの畑に伺うと、時々、採れたての野菜をその場で食べさせてもらえるんです。そら豆とかも薄皮をむかずに生のまま食べられて、味付けをしていないのにすっごくおいしい。
葱の産地に伺って採れたてをいただいたときにはその辛さにびっくり! 農家の方がふるまってくださる、地の食材を使った漬物や煮物もまた感動的なおいしさで。「この土地、この気候だから、この味が生まれるんだなぁ」と実感します。
あとは何といっても、全国各地にいる素敵な生産者さんとの出会いも食旅の醍醐味ですね。良いものを作りたいと、一生懸命に取り組まれている生産者さんが、日本にはたくさんいらっしゃいます。
そんな食や人と出会った旅の帰り道、「あの土地の空気や歴史、文化、生産者さんの思いをお客さまにも感じていただきたい……!」と、商品化に向けた準備をする時間もワクワクしっぱなしです。
FINDSグルメで社会に“いいこと”も目指したい!
――その土地にしかない味、聞いただけでワクワクします。そもそも、「ANA FINDS」のグルメがそういった“地域性”を重視するのはなぜですか?
ビジネスの視点でいうと、地域の魅力を高めて広めることが旅行需要につながるという考えがあります。だから全日空商事グループ各社それぞれが地域活性化に力を入れているんです。そしてもちろん、個人的にも地域に対する強い思い入れがあります。理由はとてもシンプルで、その地域とそこで頑張っている生産者さんや製造者さんが大好きで、心から応援したいからです。
生産者の方たちは今、厳しい状況にあります。高齢化や後継者不足で畑をたたむ生産者さん。気候変動の影響で収穫量や漁獲量が激減した生産者さん。近年の異常気象による影響も無視できず、例えば1年かけて一生懸命に育ててきた作物が、収穫直前に台風で傷がつき出荷できなくなる…… という事態も相次いでいます。
私たちにできることは、商品や地域の魅力を広く発信し、商品を購入するお客さま、そして商品をきっかけにその地を訪れる方を増やすことです。そうすれば地域は元気になるし、いろいろなご縁がつながって、もしかしたらその土地に移住する人や、農家さんの後継者も現れるかもしれません。
――地域の食や生産者を応援する取り組みは、「食」以外の課題解決にもつながりそうですね。
そうなんです。日本の食材を国内で消費する地産地消は大きな意味でフード・マイレージ(食の輸送距離)の短縮となり、食の輸送にかかるエネルギー消費やCO2排出量の削減にもつながります。「ANA FINDS」のグルメでは、傷がついて出荷できない規格外野菜や果物を使った商品も積極的に取り扱っていますが、これは生産者を守るだけでなくフードロス削減にもなります。
私がうれしいと思うのは、今回、3社合同プロジェクト「ANA FINDS」が発足して、これからは3社が力を合わせて、今まで以上に大きなチャレンジができること。グループ全体にやる気が満ちているので、勢いを持って頑張りたいと思います。
食べることが大好き! 探求心あふれるグルメ開発チームの素顔
――第一弾として40商品をラインナップしていますが、どのように「全国から厳選」したのでしょうか?
大まかな流れはこんな感じです。
全国を網羅するために47都道府県を9つのエリアに区分
6名のメンバーが手分けしてエリアごとに商品をリストアップ
集まったたくさんの商品から、SNSやメディアなどから市場評価をリサーチし、約500商品まで絞り込む
試食を重ねてさらに絞り込む
さらに現地にも足を運んで、最終的に40商品を選定
選定する過程で最も重視したのは、おいしさ。それも「普通においしい」ではなく、「すごくおいしい!」「こんな食べ物があるんだ!」という驚きや発見があることが大切でした。地域活性化につながる素晴らしい取り組みをされている生産者さんの商品であることも大きなポイントですね。そのうえで、衛生管理基準をクリアした安心安全な食品だけを選んでいます。
――商品開発チームのリーダーである金子さんから見て、チームメンバーの皆さんはどんな方々ですか?
開発当初はANAフーズや全日空商事、ANA FESTAから集まったメンバーで構成される3社合同チームという意識がありましたが、このプロジェクトの過程でオンラインでもリアルでも頻繁に話していたこともあり、もはや別会社の人たちという感覚はお互いにないですね。
率直に意見を言い合える雰囲気で、私がすごくいい! と思って推した商品も、「おいしいけど、『ANA FINDS』としてはどうかなあ」と容赦なく候補から外されました(笑)。
たまたまですが、メンバーはみんな食べることが大好きなんですよ。仕事終わりに一緒に食事するときの食べっぷりがいいし、仕事で出張に行く際にも「駅前のこのお店がおいしいらしい」「ここのお菓子が人気みたい」と現地のグルメ情報を調べて教えてくれます。食いしん坊なメンバーたちと大好きな食品の開発をするのは、やっぱり楽しいですね。
「食べることは、生きること」食の魅力に触れれば、日々の楽しみがもっと広がる!
――金子さんのプライベートについても聞かせてください。お話の節々から、もとから食べることがお好きなんだろうなと感じたのですが、食にまつわる原体験のようなものはありますか?
子どもの頃、神奈川県の田舎に住んでいて、幼稚園で米作りをしたりおじいちゃんの畑や近所の田んぼで遊んだりしていたんです。畑で大根を掘って持ち帰り、家で料理して食べる。当時の楽しい記憶があるから、食べることが好きになったのかもしれません。
食べ物の中でも、一番好きなのは炊き立てのご飯! ほかほかご飯に佃煮、汁物があれば他に何もいらないぐらい、何ならご飯に塩だけでもモリモリ食べられます。でもさすがに家族との食卓にはおかずも並べたいので、一人で食べるときだけ、自分へのご褒美みたいにご飯を3合炊いて、白米のおいしさを堪能しています。もちろん、3合は一度できれいに完食です(笑)。
――豪快ですね! 金子さんのように食べることが大好きな人がいる一方で、世の中には食にあんまり興味がないと言う人もいますよね。
そういう方にこそ「知ってほしい!」って思います。食べる行為そのものに興味が湧かなくても、食べ物の背景にある作り手の思いやストーリー、地域特有の歴史文化を知れば、きっと発見や感動に出会えますから。
「ANA FINDS」のグルメもぜひお試しいただきたいですね。「ゴーヤが苦手だけど、このピクルスはおいしい!」「ゆずのタバスコで『ゆずすこ』なんて商品があるんだ、料理に使ってみよう」など、食の新たな魅力に触れることで、日々のちょっとした楽しみが広がるかもしれません。
――ズバリ、金子さんにとって「食」とは何でしょう?
生きることそのものであり、元気の素ですね。人間は食べないことには生きられないし、たとえ仕事で疲れても、ご飯をお腹いっぱい食べれば元気になれる。私が健康でいられるのも、食べることが大好きで、毎日よく食べているからだって思うんです。心を込めて作られた良いものを食べて、心も体も満たすことはすごく大事だと思います。
――最後に、読者の方々にメッセージをお願いします!
「ANA FINDS」のグルメは、今後も商品をどんどん拡充していく予定です。日本にはまだまだ、私たちも知らないおいしいものが溢れているので、読者の皆さんからもぜひ教えていただきたいです。私たちと一緒に、おいしい食を楽しむ旅に出かけましょう!
金子さん率いるグルメチームの“ほしい”が詰め込まれた「ANA FINDS」のグルメたちは「ANAショッピング A-style」で取扱中
写真:池ノ谷侑花
文:勝部美和子
編集:エクスライト、ヤスダツバサ(Number X)
ANA FINDSを創るメンバーの"ほしい"の裏側