航空機の開発思想を取り入れた"ほしい"バッグとは? ボーダーレスな商品開発の舞台裏
2024年2月に誕生した「ANA FINDS(エイエヌエーファインズ)」は、ANAグループの総合商社 全日空商事グループが手がける商品ブランド。日本全国・世界各地から選りすぐったアイテムやオリジナル商品を展開しています。
今回は、「ANA FINDS」のオリジナルバッグにフォーカス。もともとオリジナルバッグブランドを手がけてきたANAが今、また新しいバッグを作ろうとした理由とは? 一体、どんなバッグがそろっているのか? 商品企画を担当した、全日空商事株式会社A-style事業部マーケティングチームの大友薫さんに話を聞きました。
「私たちはどんな境界も越えていける」コンセプトに込めた思い
——ANAでは、これまでもオリジナルバッグブランド「ANA DESIGN」を展開してきましたよね。今回、「ANA FINDS」として新たにバッグブランドを立ち上げたのはなぜですか?
「ANA DESIGN」はこれまで、40代から60代の男性ビジネスパーソン向けバッグを提案してきました。ところが皆さんもご存じの通り、コロナ禍によって人々の働き方が激変しました。リモートワークやオンライン会議が増えて、従来のビジネスシーンを想定したバッグはもはや通用しない。だからこれからのライフスタイルにフィットする、新しいコンセプトのバッグを作らなくてはいけないと思ったんです。
会社としては、30年もの歴史を刻んできた「ANA DESIGN」を生まれ変わらせるような大きな決断でしたが、お客さまの移動シーンに寄り添う商品づくりやデザインに対する考え方など、その遺伝子は「ANA FINDS」のバッグにもしっかりと引き継がれています。
——新しいコンセプト「CROSS BOUNDARIES(境界を越える)」には、どんな思いが込められているのでしょうか?
「ANA FINDS」のバッグが、皆さんと一緒にあらゆる境界を越えていく良き相棒になれたら…… そんな思いを込めています。
コロナ禍を経て、いろいろな考え方や新しい価値観が生まれたと思うんです。働き方はもちろん、ダイバーシティも浸透して、オンとオフ、自宅とオフィス、性別、国籍、文化、年代——今まで鮮明だったさまざまな境界が前よりも越えやすくなってきましたよね。そんな今、航空機が山や海、国境を悠々と越えていくように、一人ひとりが越えたい目標や直面している壁も「きっと乗り越えていけるよ!」と、ポジティブなメッセージを体現するバッグを目指しました。
「ビジネスからスポーツ、子育てまで自由に」航空会社ならではの発想とは?
——「いろんな境界を一緒に越えていける相棒」って素敵ですね。そんな「ANA FINDS」のバッグの特長を教えてください!
一番大きな特長は、使う人の年代や性別、使用シーンなど、あらゆる“境界”を越えて使えることです。「CROSS BOUNDARIES」というコンセプトを具現化するにあたり、航空機が山や海、国境を悠然と越えていく姿をイメージしました。そこで航空機の開発思想をバッグ作りにも取り入れれば、誰にとっても使いやすい設計やデザインを通して「CROSS BOUNDARIES」を表現できて、航空会社ならではの商品を生み出せるのではと考えたんです。
——航空機の開発思想…… というと?
航空機は、強さと軽さ、快適性という複数の目的を果たさなければならないプロダクトです。カーボンやチタン合金などの素材を組み合わせることで軽量化と強度の向上を両立し、機内はファーストクラスやビジネスクラスの非日常空間を演出する、きわめて合理的な思想に基づいているんですね。
同じように、「ANA FINDS」のバッグも素材からこだわり、徹底した軽量化と使いやすさ、シンプルで無駄のない機能美、そして上質感を満たしています。だから誰にとっても使いやすく、どんなシーンでもスマートに見えるんですよ。
——なるほど。これは航空会社ならではの発想ですね。
現在、ビジネス向けの「Athlete(アスリート)」、旅行やスポーツ向けの「Traveler(トラベラー)」の2つのラインを用意していますが、例えば、「アスリート」のトートバッグは出張や旅行用のボストンバックにもなるし、ゴルフバッグやパパ・ママバッグとしても活躍します。ビジネスパーソンから子育て中の人、趣味を楽しむ人たちまで、幅広い方に自由にお使いいただけるように設計しました。
さらに従来の「ANA DESING」の商品サイトには男性モデルを起用してきましたが、今回は「CROSS BOUNDARIES」の世界観を表現するために、働くママとそのお子さん、エネルギッシュな若い男性、貫禄のあるアクティブシニアと、幅広い層を登場させています。
「使う人を思うと、こだわりが止まらない」徹底したユーザー視点×品質ファーストで挑んだバッグ製作の裏事情
——開発時のお話も聞きたいです。「ANA FINDS」のバッグを作る過程で、意識して取り組んだことはありますか?
製作のパートナー選びですね。私たちの企画に対して、工夫や改善点を積極的に提案してもらい、一緒により良いものを作り込むために、コンペでメーカーを選定しました。お客さまの移動シーンを想像し、元となるアイデアを生むANA。独自のノウハウと、私たちにはない発想を持つメーカー。お互いの知見をかけ合わせれば、個人の想像を越えるものができるのではないかと思ったんです。
その結果、「アスリート」はバッグの自社ブランドを展開する商社、「トラベラー」はバッグ専門の大手メーカーが手がけています。両社のおかげで新しいアイデアをたくさん取り入れることができました。例えば「アスリート」のバックパックの独特のフォルムは、メーカーの提案によるものなんですよ。裾に向かってわずかにシェイプされているので、背中が小さい女性が背負ってもシュッと収まるんです。
——メーカーの強みや知見が活かされているんですね。でも、異なるメーカーが手がける2つのラインに、「ANA FINDS」ブランドとしての統一感を持たせるのは難しかったのでは?
そりゃあ、もう……(苦笑)。ただ、バッグの製作がスタートする前に、「ANA FINDS」のブランド総監修者であるKUZE DESIGNの久世迅さんと何度も打ち合わせて、コンセプトとデザインの基本方針を丁寧に設計したんです。これを元に調整を重ねて、製作の途中で迷ったときも、この方針に立ち返ることで統一感を持たせることができました。
色味やネームタグ、付属のリボンなど、デザインにも2ラインに共通項を持たせたのもポイントです。ちなみに、ネームタグとリボンは2つのメーカーに連携して作っていただいたんですよ。コンペではライバルだった2社だけど、プロジェクトが始まってからは垣根を越えて協力してもらいました。
——2社間の協力も、まさに「CROSS BOUNDARIES」ですね。今回、大友さんは商品開発担当としてメーカーや社内の調整を担ってきましたが、一番大変だったことは何でしょう?
時間との戦いですね(笑)。もっとこうしたい、ああしたいというのが後から出てきて、ギリギリまで何度もやり直していたので。
実は、付属のリボンも「表に目立つブランドロゴを入れるのは避けたい。でもブランドのアイコンとなるものはほしい」と思って悩んだ結果、自由に付け外しができるものとして生まれたアイデアなんです。発売日が迫る中、デザインや耐久性に納得がいかなくて、サンプルを3回も作り直してもらいました。いつも無理を聞いてくださって、最後まで一緒に走ってくださったメーカーの方には頭が上がりません。
こんなふうにして、「ANA FINDS」のバッグは、使う人を思いながら、気づかれないような細部までこだわり抜いて作り上げました。コンセプトづくりや設計、生産など、携わった多くの人たちの想いが宿っているんです。
「一点物や掘り出し物のファッションやインテリアが好きなんです」“ほしい!”=ワクワクを大好きな人たちと共有したい
——ここまでお仕事について話してきましたが、大友さんのプライベートについても少しだけ聞かせてください! 大友さんはやはり、持ち物やファッションにもこだわりがあるんですか?
そうですね、好きなものに囲まれて生活しています! もの選びのこだわりは、「人と被らないもの」「自分らしくいられるもの」「上質で長く大切に使えるもの」。特に一点物に強く惹かれるので、他にはない職人さんの手作りやヴィンテージの家具などが好きなんです。
中には高価で手が届かないものや、希少でなかなか手に入らないものもありますが、そんなときは高品質なリユースショップで質の良い中古品を買ったり、似ているものを探したり…… 簡単には諦めないで、どうすれば“ほしい”ものが手に入れられるか作戦を練りますね。お気に入りは眺めるだけでも気分がいいし、私の楽しみなんです。
——素敵なこだわりですね! 「ANA FINDS」のキャッチフレーズは「ほしい、が見つかる。」ですが、大友さんにとって“ほしい”を探す醍醐味とはどんなところにありますか?
仕事で商品を探すときもプライベートの買い物でも、「こんなアイテムがあったら日々のテンションがさらに上がりそう!」と想像しながら探す時間が好きですね。心がワクワクするし、時間をかけて見つけたときは、もう、頭の中がお花畑になっちゃいます(笑)。
——お花畑ですか(笑)。
アドレナリンがドバドバ出ている状態です。“ものとの出会い”って皆さんもありませんか? 「これを逃したらきっと後悔する」「何としてもこれがほしい」と思えるものに出会えたときは、すごく幸せで。私は、自分の“ほしい”や感動を、お客さまや友人たちと共有できたらもっとうれしいです。こう考えると、“ほしい”を探し、追求する今の仕事は天職ですね(笑)。
——目を輝かせて、ほしいもの探しをしている大友さんが目に浮かびます。最後に「ANA FINDS」のバッグについて、今後の展開を聞かせてください。
現在、2つのラインをあわせて13商品を展開していますが、今後も皆さんに「こんなものがほしかった!」と思っていただけるアイテムをご提案し、ラインナップをさらに充実させていく予定です。ぜひ「ANA FINDS」のバッグと一緒に、みなさんの“ほしい”を探す旅にお出かけください!
大友さんの“ほしい”が詰め込まれた「ANA FINDS」のバッグたちは「ANAショッピング A-style」で取扱中
写真:橋本美花
文:勝部美和子
編集:エクスライト、ヤスダツバサ(Number X)
ANA FINDSを創るメンバーの"ほしい"の裏側